先日、海外在住の方から日本の不動産売却のサポートのご依頼を受けました。
日本の不動産を売却する場合、基本的には不動産の「権利証」または「登記識別情報通知」が必要です。
しかし、今回のケースは、土地の「登記識別情報通知」を紛失してしまっており、売主(不動産の所有者)としての意思確認を別の方法でしなくてはならない というケースでした。
なかなかレアケースらしく、ネットに参考になる情報も見当たらなかったため、同じような境遇の人のためにこの記事を記録として残すことを目的に書いています。
私は不動産業者でも司法書士でもありませんので、「自分の取りたい仕事を取るために記事を書く」のではなくあくまでも中立的なアドバイスをここに書くことができます。
※現在、私は行政書士をしています。以前は不動産仲介業者に勤めていたこともあります。
【免責事項】
※この記事の執筆にあたって、内容の正確さには万全を期しておりますが、万一この記事の情報を基にして取った行動により予想外の経済的損失等が発生したとしても当方は一切の責任を負いませんので予めご了承ください。
権利証と登記識別情報通知について
※私は司法書士ではないので、正確な説明ではないかもしれませんがざっくりと書きます。
以前は、「権利証」を不動産の所有者であることの確認に使っていたそうです。
平成25年か平成27年あたりから、権利証ではなく「登記識別情報通知」というのに変わったそうです。
権利証も登記識別情報通知も、どちらも紛失しても再発行はできないそうです。
たとえ天災などによる紛失でも再発行不可とのこと。
これを紛失してしまうと、「情報通知」や「司法書士による本人確認」が必要になってしまうので、紛失しないようにしたいですね。
権利証や登記識別情報通知を紛失した場合どうすればよいのか
権利証や登記識別情報通知を紛失した場合、以下の3つの選択肢が考えられるそうです。
- 司法書士による本人確認
- 法務局による事前通知
- 公証役場での本人確認
公証役場や法務局に確認しましたが、③公証役場での本人確認は、これまでに1回も実施したことがないとの回答でした。
※都内の巨大なターミナル駅にある公証役場の公証人さんが言っていました。
そのような公証役場は利用者がものすごく多いので、その公証人さんが経験したことがないと言っているということは、まず利用は考えない方がよいのかもしれません。
(公証役場で対応してもらえたとしても、それが法務局で無事に認められないと、最悪の場合、移転登記申請が却下になってしまう可能性もあります)
「②法務局による事前通知」ですが、こちらは日本の登記上の住所あてに法務局から、本人限定受取郵便(特殊型)にて郵送されます。
原則として日本にいる代理人の住所あてに送ってもらうことはできないそうです。
※ただし、特例があって、以下のように在外の日本大使館で「委任状の認証」をしてもらうことにより、日本にいる代理人の住所を事前通知の送付先に指定ができるそうです(法務局の職員さんに直接聞いた情報ですが、念のため利用される方はご自分でも確認をおすすめします)
また、本人限定受取郵便は委任状を用意しても、代理人が受け取ることは認められていません。
登記申請があった後、法務局から登記上の住所あてに、「売主(所有者・登記義務者)」に「所有権移転の意思が本当にあるのか」を確認するための制度です。
事前通知が郵送されてきた場合、2週間以内に、文書に署名・押印して法務局へ返送しないと登記申請が却下(取下)になってしまうので速やかに対応が求められます。
なお、海外在住の方の場合は、2週間ではなく4週間以内の回答でよいそうです。
ただ、私の担当した今回のケースは、「住所があまりはっきりと決められていない国」だっため、事前通知を利用することはできませんでした。
そのため、「①司法書士による本人確認」での対応が必要となりました。
上記の「司法書士の本人確認」による不動産売却(所有権移転登記)にあたっては、現住所への住所変更が済んでいない場合、先に住所変更登記が必要ですのでご注意ください。
※海外の住所ではなく、日本の現住所になります。