
外国人が介護福祉士を目指す「EPA・特定活動」在留資格とは?
日本では、高齢化の進行により介護人材の確保が喫緊の課題となっており、外国人材の受け入れ制度がいくつか用意されています。その中でも「EPA(経済連携協定)」に基づく外国人介護福祉士候補者の受け入れは、比較的早い時期から始まった制度であり、国家資格「介護福祉士」の取得を前提とする高度な制度です。
この記事では、EPAに基づく「特定活動(介護福祉士候補者)」という在留資格について、制度の概要や対象国、受け入れの流れ、他の制度との違い、今後の展望まで詳しく解説します。
■ EPA(経済連携協定)とは?
EPAとは、「Economic Partnership Agreement(経済連携協定)」の略で、日本と他国との間で締結される包括的な経済協定です。物品・サービスの貿易だけでなく、人の移動や投資など幅広い分野での協力を定めています。
介護分野に関しては、日本が締結したEPAの一環として、提携国からの「看護師候補者」および「介護福祉士候補者」の受け入れが行われており、外国人が日本の国家資格を取得するために在留することができる制度です。
■ EPA介護の対象国
現在、日本とEPAを締結し、介護福祉士候補者の受け入れが行われているのは、以下の3か国です。
- インドネシア
- フィリピン
- ベトナム
これらの国の政府機関を通じて人材が推薦され、日本の介護施設において一定期間就労しながら、日本語学習や介護福祉士国家試験の受験を目指します。
■ 在留資格「特定活動(EPA介護)」の概要
在留資格「特定活動」は、入管法別表第一・告示外活動に該当し、法務大臣が個別に許可する活動に対して認められる資格です。EPAに基づく外国人介護福祉士候補者は、この「特定活動」の一類型として滞在することになります。
◆ 在留期間
在留期間は最長で4年間です(国家試験合格までの準備期間含む)。この間に国家試験に合格できなければ、原則として帰国する必要があります。
◆ 活動内容
- 日本の介護施設において実務を行いながら、介護福祉士国家試験の合格を目指す
- 就労しながらの日本語教育、試験対策などの支援を受ける
- 国家試験に合格した場合は、「介護(在留資格)」へ移行し、日本で引き続き就労が可能
■ EPA介護の受け入れの流れ
- 候補者の選定(母国政府による)
各国政府が人材を選定し、日本政府と受入施設に推薦。 - 日本語研修(6か月間)
日本国内で基礎的な日本語の習得を目的とした研修を受ける。 - 受け入れ施設への配属(3.5年間)
日本の介護施設で就労開始。国家試験の準備も並行して行う。 - 国家試験受験
在留期間中に介護福祉士国家試験を受験。合格すれば「介護」ビザに変更可能。
■ 他制度との比較(技能実習・特定技能・介護)
制度 | 在留資格 | 目的 | 日本語要件 | 在留期間 | 資格取得 |
---|---|---|---|---|---|
EPA | 特定活動 | 国家資格取得 | 必須(N3〜) | 最長4年 | 必須(介護福祉士) |
技能実習 | 技能実習 | 技能移転 | 推奨(N4程度) | 最長5年 | 不要 |
特定技能 | 特定技能1号 | 労働力確保 | 必須(試験合格) | 最長5年 | 不要(試験合格が条件) |
介護 | 介護 | 専門職としての就労 | 必須(N2程度+介護福祉士) | 更新可(期間更新型) | 必須(介護福祉士) |
■ 受入施設のメリット・留意点
【メリット】
- 国家資格を取得した外国人材を長期雇用できる
- 高い意欲を持つ人材が多い
- 日本語能力や業務理解度が比較的高い
【留意点】
- 初期研修費用や住居支援など、一定の負担がある
- 国家試験に不合格の場合、4年で帰国となるリスク
■ 今後の展望と課題
EPA介護は、質の高い外国人介護人材の育成という点で一定の成果を上げてきましたが、一方で国家試験の難しさや日本語能力の壁、受入側の負担など、課題も残されています。
今後は、日本語教育の充実や試験制度の柔軟化、受入支援体制の強化などが求められています。また、国家資格を取得した人材が継続して活躍できる環境の整備も重要です。
■ まとめ
EPAに基づく「特定活動(介護福祉士候補者)」は、外国人が日本の国家資格を取得し、専門職として日本で働くためのハイレベルな制度です。介護現場の人手不足を解消すると同時に、国際的な人材交流の重要な柱でもあります。
受入機関にとっては、手続きや費用面のハードルはあるものの、長期的な視点で見れば大きな戦力となる可能性を秘めた制度です。
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